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Pentre Ifan
Dolmen
Pembrokeshire
SH 099370

P.1  P.2

ペンブローク地方は民間伝承の宝庫だ。1911年に出版された本の中でこの近くで育った老女が、「兵隊のような服を着て赤い帽子をかぶった小さな子供のような姿」の妖精がこの近くにしばしば現れると語っている。石を動かそうとすると蜂の群れに化けた妖精の大群に襲われる、取り除いた岩を夜中に小鬼が元の場所に戻すのを見たというような話にも事欠かないという。
この地域は、6世紀のウェールズのバード=吟唱詩人タリエシンの生誕地とも言われていた。タリエシンは実在の人物だが、その存在はアーサー王伝説とともに神話化されている。ウェールズでは彼の人生をめぐる数奇な物語は、『タリエシンの書』としてまとめられており、非常にポピュラーだ。
このドルメンは別名「ケリドウェンの子宮」とも呼ばれていた。ケリドウェンはケルトの女神だが、タリエシンの物語では魔力のある女性として描かれる。ケリドウェンは魔法の大釜で醜い息子のために知恵を授けるスープを一年かけて作っていた。ようやく出来上がりというところで、間違って魔法のスープを飲んでしまった別の男の子グウィオンはこの世の全ての知恵を身につける。怒り狂うケリドウェンから魚やウサギなど様々に姿を変えつつ逃げるが、最後に一粒のトウモロコシの粒に化け、雌鶏に化けたケリドウェンに食べられてしまう。トウモロコシの粒に化けたグウィオンが生まれ変わって女神の腹から出たのがタリエシンだという話。つまり、「ケリドウェンの子宮」という名はタリエシンが生まれ出た場所という意味だ。
イギリスのフォーク・ミュージック好きにとっては、インクレディブル・ストリング・バンドの映画Be Glad for the Song Has No Endingに収録されていた「海賊と水晶玉」の舞台としても馴染み深い。