ブラジル北東のピアウィ州南東の端に位置するカピバラ渓谷国立公園Serra da Capivara National Parkは、南北アメリカ大陸で最も多くの先史時代の岩絵のある場所であり、
従来のアメリカ史を塗り替える重要な発見がなされた場所だ。
カピバラ渓谷の発掘調査は1970年代にフランス系ブラジル人ニエデ・ギドンNiède Guidonを中心としたブラジル・フランスの合同チームによって始められた。
約10万年前の地層から方解石の塊を加工した石器が発見され、岩絵は3万年前まで遡るという報告がなされた。
これは、氷河期末期の約13000年前、ベーリング海峡経由で渡ったモンゴロイドが「最初のアメリカ人」であるという定説を否定するものであり、
北米の考古学者から猛反発をうける。
石器とされるものは自然に砕けた石塊だろう、また、人が燃やした炭片とされるものは自然の山火事によるものだろうと。
だが、21世紀に入って、北米からも従来の歴史観の変更を余儀なくされる年代の古い発見などが相次ぎ、「最初のアメリカ人」に関する議論が沸騰している。
カピバラ渓谷の遺跡はブラジル政府とギドン教授を中心として1986年に設立されたFUNDHAM(Fundação Museu do Homem Americano) =アメリカ人類博物館基金によって
管理・運営されており、現在も発掘調査が続いている。
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