模様が風景のように見える石は様々な時代、様々な地域で珍重されてきた。ヨーロッパではかつて天地創造の習作の名残であるとも言われ、錬金術師たちからは岩石中の「霊気」の作用によると考えられた。特にフィレンツェで産する大理石Paesina=小さな絵は有名で、意図された「絵画」としかいいようのない見事な標本がメディチ家やチェコのルドルフ二世などによって蒐集されたという。Paesinaには模様が建物の廃墟のように見えるものも多く、これらは「あばら屋石(ruin
marble)」と呼ばれている。これらの石の模様を神話や旧約聖書の物語の場面に見立てて、石の模様の上に人物画を描き加えて一枚の絵画とした作品なども多々残されている。イギリスのCothamで産する原始的な藻類の化石もポプラ並木のような景色を作り出すことで有名だ。Stromatoliteの化石は世界各地で採れるがこうした模様のものは他にない。アメリカのオレゴン州産のジャスパーには風景石として知られるものがいくつかあり、特にビッグス・ジャスパーの模様は山々が連なる独特な景観を生み、樹状にのびた金属のインクルージョンがさながら谷に生えた木々のように見えるものがある。バランスの良い「風景画」としてトリミングされたものは高値で取引される。 |