スタンディングストーン=Standing
Stone
一つないし少数の岩が、特に規則的な配列もなく立っている場合、このように総称する。単独で立っている岩にあたえられることが多い名前。「長い石」を意味するブリトン語、メンヒルとも呼ばれる。モノリス=一本の石柱とも呼ばれる。ブリテン島、アイルランドに大量に残っている。用途に関しては定説はないが、道標として使われたとみられるものもある。
列石=Stone
Row
岩を規則的に並べたもの。英語でストーン・ロウ。三つ、四つの岩が並ぶものから、延々と数キロにわたって並ぶものまである。最も大規模なものは三〇〇〇もの岩が数列、4キロ以上にもわたって並ぶフランスのブルターニュにあるカルナックの列石。
ストーンサークル=Stone
Circle
環状列石。岩を円周上に規則的に並べたもので、規模や岩の大きさなどは様々。世界各地に似たものがある。イギリスやアイルランドの場合、ストーンサークルにはいくつかの種類がある。墓などの周囲に装飾的に岩が配置されたものを除外し、石の環そのものが独立した施設として造られたものが、いわば、「真性の」ストーンサークルだが、これはヨーロッパの巨石文化圏では、ブリテン島周辺にほぼ限られている。用途には諸説ある。
ヘンジ=Henge
円形の土手と堀に囲まれた、古代の祭祀用スペースを指す。巨石文化よりも歴史が古く、ストーンヘンジも、最初は岩を使わない、土塁のみの施設だった。ブリテン島をほぼ真ん中から東西二つのエリアに分けると、東側に多くみられ、真ん中のエリアにAveburyやArbor
Lowなど、ヘンジとストーンサークルを組み合わせた遺跡が多くみられる。東側には岩石が少なかったためとも考えられる。
ウッドヘンジ、ウッドサークル=Woodhenge,
Wood Circle
木の柱、丸太をサークル状、同心円状に立てたとみられる施設。ヘンジを伴うものをウッドヘンジと呼ぶ。ストーンヘンジの近くにあるWoodhengeに代表されるように、ほとんどは柱の跡が残るのみだが、近年、ノーフォーク地方の海辺で炭化した木のサークルが発見され、シー・ヘンジとして話題を呼んだ。用途はストーンサークル同様不明。
ケルン=Cairn
石を山状に積み上げたもの。墓を覆っているものが多い。英語の発音としては正確にはケァーンが近いが、ここでは日本人に馴染み深い石積みの名、「ケルン」と表記する。代表的な例としてスコットランド北東部にあるBalnuaran
of Clavaなど。
ドルメン=Dolmen
ブリトン人の言葉で、「テーブル状の岩」を意味する。三つ以上の立石の上に水平な岩が乗っているもので、ほとんどが古代の墓の石室の石組が露出したものだ。コーンウォール地方、ウェールズではクォイト、クロムレクとも呼ばれる。ウェールズのPentre
Ifanなど が有名。
マウンド、土塁=Mound
土を盛り上げた古代の施設。多くは墓を覆っているが、単に土を高く盛ったものもある。最大のものはウィルトシャーに残る巨大なマウンドSilbery
Hill。
石室墓=Chambered
Cairn
遺骨や遺骸を単に土や石で埋めるのではなく、石室に遺骨を安置し、上から土やケルンで覆っている墓のこと。スコットランドのCairnholyなど。
長塚墓=Long
Barrow
ロング・バローと呼ばれる、長いマウンド状の共同墓。数世紀間使用される例が多い。ストーンサークルなどが登場する前に数多く作られた。有名な例としてはウィルトシャーに残る、ストーンヘンジと同じサーセン石を使った巨石の長塚墓West
Kennet Long Barrow。
円墓=Round
Barrow
ラウンド・バローと呼ばれる、円形のマウンド状の墓。青銅器時代に入ってから作られたスタイルで、ほとんどが個人の墓。ストーンヘンジ周辺に数多く残っている。
通廊付墳墓=Passage
Tomb
マウンド状の墳墓のほぼ中央に石室があり、そこまでほぼまっすぐな通路が続いているタイプの墳墓。アイルランド北東部のNewgrange、スコットランド北方のオークニー諸島にあるMaes
Howeなどが代表的な例。 通路は冬至の日の出、日没、夏至の日の出などの方角に合わせて設計され、日の光が石室内に入るようにつくられている場合もある。
カップ&リングマーク=Cup
and Ring Mark
初期青銅器時代に彫られた岩絵。丸く穴を彫ったものをカップマーク、円、同心円を彫ったものをリングマークと呼び、両者が組合わさったものを、このように総称する。用途、意味は不明だが、天体の運行と関連づけて考える研究者も多い。スコットランド、イングランド北部、アイルランド南部、遠くはスペインのガリシア地方にもみられる。Bollochmyleの岩絵などが代表的な例。
レイ・ライン=Ley Line
アマチュアの考古家、アルフレッド・ワトキンズによって20世紀前半に提唱された考えで、遠く離れたいくつかの古代遺跡や古い教会などが偶然とは思えない頻度で直線上に並んでいるのは、古代の道の痕跡だという考え。考古学界では全く評価されなかったが、アマチュアの考古家には大変な反響を呼び、「直線」を探すレイ・ハンターを多く生んだ。後に、このラインは「地のエネルギー」が通っている道筋だと考える人たちも増え、現在に至っている。
メジャー・スタンドスティル、マイナー・スタンドスティル
月は地球の周りを回っているが、軌道が地球の赤道面とずれているため、地上から観た月が通るコースは18.6年周期で変化していく。この周期で、月の軌道が最も南寄りのコースを通る場合と最も北寄りのコースを通る場合の開きが最も大きい年をメジャー・スタンドスティル、最も変化が少ない年をマイナー・スタンドスティルと呼び、月はこの二つの極端の間をそれぞれ約9.3年ずつ動いて、一周期となっている。Loanhead
of Daviotなど、スコットランドの東部に特有の、横向きの石が置かれたストーン・サークルは、横向きの石がこのメジャー・スタンドスティルの年に満月が最も南寄りに沈む方角に合わせてあることが多いため、月の軌道と遺跡との関連を考察する研究者も少なくない。