アルジェリア南東部、リビアとの国境に近い堆積岩の台地タッシリ・ナジェールは様々な先史時代の壁画が集中しているエリアだ。
採集氷期が終わり、サハラが湿潤な気候のサバンナであった「緑のサハラ」に描かれた絵がおびただしい数残っている。
ゾウ、サイ、キリン、ライオンなど、現在では中・南部にしか生息していない野生動物が多く生息し、これらの動物を追って入ってきた狩猟採集民、
6500年前頃から北東アフリカから入ってきた複数のルーツをもつ牧畜民。地中海沿岸から馬を持ち込んだ人々、
サハラが再び乾燥した砂漠に戻ってからのラクダとともに移動した遊牧民の時代など、
自然環境の変化、様々な民族とそれぞれの生活様式が絵画、刻画として砂漠の岩山の壁面、シェルター内に絵巻のように残っている。
とくに、「白い巨人」などで知られる、初期の狩猟採集民によるRound Head(円頭人)と呼ばれる人物画や神像、
イヘーレン様式と呼ばれる、生活の場面を繊細で写実的な筆致で残した白人系の牧畜民による絵が数多く見られるのも特徴だ。
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